私が小さいころ、祖父は毎日のように朝食をのんびりととり時間をかけて朝刊を眺めていました。かなり無口な人でしたので、会話をする機会もほとんどなかったように覚えています。そんなほとんど関わることがない祖父でしたが、時たま肩こりをするようで、顔をしかめている様子を見かけました。小学生だった私は、肩もみをおじいちゃんにしてあげるチャンスだと、それはうれしく思って、肩をトントン叩いてあげました。もしかすると、ほとんど肩こりを理解していない私のマッサージは、きちんとツボにあたっておらず、ただ痛いだけのものだったのかもしれません。しかし祖父は、とてもうれしそうに肩もみを受け入れてくれていました。気分が乗って長くマッサージをしたときも、疲れてしまってすぐに切り上げてしまった時も、どちらも同じように嬉しそうな笑顔を見せてくれました。特にお駄賃をくれるという事もありませんでしたが、普段は会話がほとんどなかった私達の間をマッサージが取り持ってくれていたように思い、今でも思い出します。